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 退職金とは、労働者が退職時に企業から支給される一時金のこと一般的に退職金といいます。退職金については、支給の有無や制度設計など、各社の制度は非常に様々です。年金方式で企業年金と呼ばれるような支給形態もあります。

そもそも退職金とは?

 退職金は賃金の後払い?

 退職金については、労働者が毎期受け取れるはずの賃金の一部を積み立てていき、それらの合計を退職時にまとめて支給するという、賃金の後払いという見方と、在職期間中の功労に対して支給される報奨金的な見方と、さらには退職後の生活保障的な見方が存在します。ほとんどの場合、退職金はこれらの要素が混在しており、このうちのどれに該当するか、というよりは、すべての該当する場合が多いと思われます。どの要素を重視するかは、その企業の退職金制度の設計や構成のいかんによってきます。

 いずれにしても、支給条件の明確な退職金は、「その法律上の性質は労働基準法11条にいう『労働の対償』としての賃金に該当」し、したがって、退職者に対する支払いについては、その性質の許す限り、賃金の支払いに関する同法24条本文の規定が適用または準用されます。

 また、就業規則などの明文上の規定が置かれていない場合でも、何らかの他の明確な基準によって従来から退職金が支払われており、労使慣行として成立していると認められれば、使用者には退職金支払義務が認められます。

退職金はいつ発生するか?

 労基法89条は常時10人以上の労働者を使用する使用者に対し、就業規則の作成義務を課していますが、同条において退職金については「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払時期に関する事項」を記載するように定められています。つまり退職金制度を設けるかどうかは会社の判断によります。

 ここにいう「退職手当」とは、

①労使間において、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確になっていること
②その受給権が退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化する債権であること

①②を満たすものであればよく、支給形態(一時金か年金か)は問いません。

また、使用者が中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金等の社外積立型退職手当制度を利用して退職手当制度を設けている場合は、それ自体でこの要件を満たしていることから、所定事項を就業規則に記載しなれば労基法違反となります

 「退職手当の決定、計算及び支払いの方法」とは、例えば、勤続年数、退職事由等の退職手当額の決定のための要素、退職手当額の算定方法および一時金で支払うのか、年金で支払うのか等の支払い方法のことをいいます。

また、退職手当について不支給事由または減額事由を設ける場合には、これは退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に該当しますので、就業規則に記載しなければなりません。

退職金の支払時期

 労基法23条1項は、使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称のいかんを問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定め、同条2項は、異議のない部分を7日以内に支払い、または返還しなければならないと定めています。

 これに対し、退職金は、退職前において単なる期待権であるため、労基法上も毎月払い、非常時払いの対象とされていないし、そもそも退職金制度を設けるか否かについても法律は関与していません。この点について、行政解釈においても退職労働者の請求があった場合でも、「退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りる」とされています。

支払時期については、できる限り具体的に規定すべきと考えられます。いつまでに支払うかについては明確にしておく必要があるとする通達もあります。

もし、雇用契約上支払期日の定めがまったくない場合には、労働者から請求があった後7日以内に支払わなければ労基法32条違反となります

退職金の消滅時効

 労基法は、退職手当を除く同法の規定による賃金、災害補償その他の請求権は2年間、同法の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては時効によって消滅する旨を規定しています。

ただし、民法が改正され、2020年4月より、短期消滅時効が廃止され、民法上の消滅時効は「債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき又は権利を行使することができるときから10年間行使しないとき」とされ、5年間に統一されました。

改正民法と労基法の関係は、現時点(2019年9月2日)ではいまだ議論がなされており、結論が出ていませんが、短期消滅時効が廃止された以上、賃金(残業代を含む)の債権を2年間としておくことには意味がないように思われます。