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 就業規則は会社のルールブックであると同時に、従業員一人一人との労働契約の枠組みを示す役割があります。そのため、就業規則は単に作成義務があるから作成するといったような場合、いわゆる借り物の就業規則だと、自社の実情に即していなかったり、従業員に非常に有利に働く場合も出てくる可能性もありますので、しっかりとした作成が必要です。

就業規則と労働契約の関係は?

 就業規則と労働契約の関係については、労働契約法12条に定められています。また就業規則と労働協約の関係は労基法92条、労働協約と労働契約の関係は、労組法16条にそれぞれ定めがあります。

 これらの効力の優先順位は優位なものから順に、①強行法規、②労働協約、③就業規則、④労働契約となります。労働基準法等の国の強行法規は、一番上ということになります。

 使用者が一方的に制定改廃することのできる就業規則や使用者と個々の労働者が結ぶ、労働契約よりも、労働者の団体である労働組合が使用者と結んだ労働協約が優先します。そして、個々の労働契約よりも使用者が労働者代表の意見を聴いて制定する就業規則が優先するということになります。

ただし、労働協約と就業規則、労働契約の関係については労働協約に定めた労働条件の基準に違反する限り、たとえ就業規則等の内容の方が労働者に有利であっても、労働協約の効力が優先します。(協約の趣旨がこれを上回る特別合意を認める最低条件保障的なものであれば就業規則等の方が優先されます)

就業規則を上回る労働契約は?

 優先順位で見たように、就業規則の方が、ここの労働契約の効力よりも優先されます。就業規則の定める条件に達しない(それより低い)労働条件を定める労働契約を無効にするのみで、上回る個々の特約については無効としないという原則になっています。

不利益変更と既存の労働契約の関係は?

 就業規則の一方的な不利益変更と既存の労働契約の内容との関係について、最高裁は次のように示しています。

「新たな就業規則の作成または変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。」(秋北バス事件)

合理的であるかどうかとは?

「右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成または変更がその必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであるということ解される。特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるための高度の必要性に基づいた合理的な内容である場合においてその効力を生ずる。」(大曲市農協事件)

「右の合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項も関する我が国社会にける一般的状況等を総合的考慮して判断すべきである。」(みちのく銀行事件)

まとめ

 以上のように、就業規則に一方的な不利益変更については厳しい条件が課されていますが、その変更が合理的な内容のものであると認められる場合には、たとえ個々の労働者が反対したとしてもその適用は拒めないということになります。その場合の合理的についても前述の判断の示すように、変更されようとしている労働条件内容によっても要求される合理性の強弱にはニュアンスの違いがあります。賃金、退職金のような労働の対価の変更については特に強い合理的な理由が求められます。同様に労働時間についても労働条件の中で重要な位置づけとなりますので、これに準ずるような合理性・必要性が求められるでしょう。このような判例の考え方が平成20年3月からの労働契約法にとりこまれ、名文の法律となっています。

【参考】

労働契約法 第十条 「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。 」


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