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 常時雇用する労働者数が50人以上の会社には、業種を問わず、衛生管理者の選任が義務付けられています。筆者も社会保険労務士の受験よりも前に、業務上の必要から第一種衛生管理者の試験を受け、選任されていました。それから約10年間衛生管理者としての職務も社内で行っていました。安全管理者もそうですが、衛生管理者も非常に担当する範囲も広く、試験の知識だけでは対応できず、様々な人に助けてもらいながら業務を行っていました。

衛生管理者の職務とは

 衛生管理者の職務は、労働安全衛生法10条1項の各号に定められる業務のうち、衛生に関する技術的事項を管理することです。

 衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、ただちに、労働者の健康障害を防止するために必要な措置を講じなければならないとされています。

 またこれに対し、事業者(会社)は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をないうる権限を与えなければならないとされています。

 衛生管理者の職務の一つである「健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること」の中には、「健康診断の結果に基づく事後措置、作業環境の維持管理、作業の管理及び健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置が含まれる」とされています。

 具体的な職務としては、①健康に異常があるものの発見および処置、②作業環境の衛生上の調査、③作業条件、施設等の衛生上の改善、④労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備、⑤衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項、⑥労働者の負傷および疾病、それによる死亡、欠勤および移動に関する統計の作成、⑦その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所で行われる場合における衛生に関し必要な措置、⑧その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等があげられます。

このように衛生管理者の職務として健康診断に基づく事後措置は、非常に範囲の広いものとなっています。一人で行うことはほぼ不可能と思われますので、産業医や保険スタッフ、健診機関との連携も必要となります。

健康診断の実施と安全配慮義務

 事業者(会社)は、定期健康診断、特殊健康診断その他厚生労働省令で定める健康診断を実施する義務があります。

 なお、事業者が行う定期健康診断は、「一定の病気の発見を目的とする健診や何らかの疾患があると推認される患者について具体的な疾病を発見するために行われる精密検査とは、異なり、企業等に所属する多数の者を対象にして異常の有無を確認するために実施されるものであるから、その医療水準は「一般医療水準に照らし相当と認めらる程度の健康診断を実施しあるいはこれを行いうる医療機関に委嘱すれば足り」、明白に水準を下回り、かつ事業者がそれを知っていたり知ることができたというような事情がない限り、安全配慮義務違反はないとされています(東京海上日動火災保険・海上ビル診療所事件)

安全配慮義務としての憎悪防止義務

 事業者(会社)は、安衛法上の義務として、健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師等の意見を聴取し、必要があるときは「当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備又は整備、その他適切な措置を講じなければならない」とされ、さらに「特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うよう努めなければならない」とされています。

 裁判例としては、使用者(会社)が、健康診断実施後の事後措置等により、その健康状態を把握し、労働者の健康保持のために適切な措置をとることも安全配慮義務の内容となるとしています。

 また、健康を害した労働者が、当該業務にそのまま従事されては健康を悪化させるおそれがあると認められるときは、「速やかに労働者を当該業務から離脱させて休業させるか、他の業務に配転させるなどの措置をとる契約上の義務を負い、それは、労働者からの申し出の有無に関係なく、使用者に課せられる性質のものと解するが相当である」とし、使用者にの一環として憎悪防止義務を課しています。

健康状態の労働者からの申し出の有無

 労働者から健康状態に関し、申し出がない場合、使用者は憎悪防止義務をどうするか、問題となります。

 多くの判例によれば、安全配慮義務は労働者の申し出があって初めて生じる義務ではないとしています。

 つまり、会社は、健康診断実施後の結果を踏まえ、何らかの兆候等がみられるのであれば、精密検査等を受信するよう指導を行うことや、業務の権限措置を図ることも必要となります。

 使用者が労働者の健康状態の悪化を知りあるいは知り得べきである場合には、労働者から健康状態の申し出の有無にかかわらず、憎悪防止のために相当程度の注意義務が課されているものと考えられます。

まとめ

 衛生管理者の業務範囲は広く、また専門性に富んだ領域となっています。そのため産業医や健康保険スタッフ、健診実施機関との連携を密にする必要があります。また社内においても、50人以上の規模の会社が対象ですので、一人ですべて対応することは難しいと思いますので、社内各部署との連絡・報告の体制を整備することが必要です。

 いずれにしても衛生管理者の試験(社労士試験も含めて)では、法律的なことが問われます。そのことも重要なことですが、実際の業務となると、テキスト以上に範囲の広い対応が求められますので、基本的なことはテキストから学び、しっかしと経験を積んでいく必要があります。