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 年金支給開始年令の引き上げや長寿命社会の到来により、定年制の廃止や定年年齢の引き上げをされる企業が多くなっています。定年制を引き上げた際、その社員の給与の原資はどうするかなど、会社ごとの問題もあり、その際、労働条件(労働契約)をどうするかは重要な問題です。

雇用延長の形態

 雇用延長の形態としては、定年延長勤務延長再雇用制度の3種類があります。

定年延長とは、定年の年齢を引き上げることであり、勤務延長とは、定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度をいい、再雇用制度とは定年によりいったん雇用契約を終了させた上で、再び雇用契約(通常は期間の定めのある雇用契約)を締結することをいいます。

 定年延長では、対象の労働者を一律に引き続き雇用する義務が生じますが、あとの2つの制度は企業が人選を裁量で行えるメリットがあります。

 勤務延長は、言葉のとおり、労働条件は、従前と変わらないのが原則的な扱いで、本人の同意があれば変更ができるのに対し、再雇用制度では労働条件は大幅に変更されるのが一般的です。

 そういった意味においては、再雇用制度が使用者にとっては、弾力的な運用ができる制度といれるかもしれません。

延長した部分の労働条件の設定

 従来の定年を60歳とし、定年を65歳まで延長したとします。その場合、60歳から、65歳までの間は賃金等を含めて労働条件が存在していません。そのため、その間、従来と異なる賃金体系等に設計する(変更する)ことは自由です。元々雇用が予定されていなかった空白部分についての設定ですから、判例の中には、不利益変更の法理を類推適用した判例もありますが、根本的な疑問は残ります。

定年延長に伴う労働条件の不利益変更は可能か?

 65歳までの定年制を導入することとあわせて58歳から賃金体系を不利益に変更したり、退職金の支給基準を不利益に変更することは、労働条件の不利益変更の法理が適用されます。

 労働協約の締結で行えば、原則有効となりますが、就業規則の変更の場合は、合理性が認められるか、「必要性」と「不利益性」の相関関係で判断されます。

 参考となる判例としては、定年延長に伴う賃金、賞与の切り下げを有効とした判例があります。

 この事案では、55歳定年と3年の雇用延長から60歳に定年延長したことに伴い、賃金等を大幅ダウンし、旧55ないし58歳の合計賃金が新55ないし60歳の合計によるという相当に不利益性の高い事案でしたが、変更の必要性が高度であったとして有効とされました。

 したがって、不利益変更が可能かどうかは、やはり不利益変更法理によって個別事案ごとに判断されることになります。