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 時間外手当の支払いは給与計算の中でも重要な部分です。この部分を誤ると未払残業代として請求される可能性もありますので、注意が必要です。基本から確認していきます。

労働基準法32条の労働時間とは?

 使用者は、所定労働時間を通じた労務の提供に対し、所定の賃金支払義務を負います。この義務には労基法24条により罰則が規定されています。また、労基法32条の法定労働時間を超えて労働者を労働された場合、その労働時間のすべてに対し割増賃金を支払わなければならいとされています(37条)。

 ここでいうう労働者を「労働させ」るとは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれテイル時間」をいいます。判例や通説では、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれてているものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」とされています。すなわち、労働者が置かれていた状態を客観的に観察して、使用者の指揮命令下にあると認められる限りは労働時間に該当し、これを労使に合意により非該当とすることはできません。

自発的な持ち帰り残業にも時間外手当は必要?

 労働者の所定労働日における労働についてみると、いわゆる所定労働時間については、就業規則等の雇用契約いおいてあらかじめ一般的に使用者の指揮命令の下に置かれたものといえ、特別の事情がない限り、その時間帯は労働時間に該当します。

 これに対して、「自発的な持ち帰り残業」は、使用者の包括的な指揮命令の下にある所定内労働から外れ、かつ、使用者の個別的な指揮命令も発せいられていませんから、使用者の指揮命令下にはなく、特段の事情のない限りは、労働時間とは認められません。したがって労基法37条の関係でも「労働時間を延長」したことにはならず、割増賃金の支払い義務は発生しません

労務管理上の注意点

 それではいかなる場合も割増賃金の支払いは必要ないかということですが、注意点があります。つまり労働時間を延長する使用者の個別的な指揮命令が発せられた事実がなくとも、使用者が具体的に指示した仕事を客観的にみて、その分量あるいは納期との関係上所定労働時間内ではこなしきれないと認められるならば、その仕事を与えたこと自体が目次的な労働時間の延長命令とされる可能性があり、その場合は割増賃金の支払いは必要となります。

行政解釈においても「教員が使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合のごとく、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」とされています。

 したがって、自発的な持ち帰り残業が行われた場合は労基法37条にいう労働時間延長に当たらないが、上司の明示または黙示の業務命令があればこれに当たり、割増賃金の支払いが必要となります。

15分くらいの残業にも割増賃金は必要?

 日々の就労における15分程度の残業は仕事の後片付け程度のものに過ぎず、その観点から労働時間とみる必要はなさそうに思われますが、終業時刻後の作業服および保護具の脱衣に要した時間について労働時間制を認めた判例もあり、業務の遂行に必要な後片付け作業も労働時間に該当します。したがって15分程度の後片付けであっても、労働時間であり、残業として割増賃金の支払いの対象となります。

集計方法と端数処理

 割増賃金の計算を分単位で毎日行う必要があるわけではなく、日々の時間外労働を記録しておいてそれを賃金締切時に集計し、その合計時間に対して割増計算を行うことで問題はありません。なおかつ、その月における時間外、休日又は深夜の総労働時間数に30分未満の端数がある場合には、これを切り捨て、それ以上の端数がある場合にはこれを1時間に切り上げることは「常に労働者に不利になるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第24条及び法第37条違反としては取り扱わない」とされています。あくまで1月の総労働時間に対しての切り捨て・切り上げですので、毎日の時間外労働に対して切り捨て・切り上げを行うわけではありません。