• TEL: (0823)25-5015
  • 助成金情報・人事労務に関する情報を社会保険労務士が徹底解説

 仕事中のケガや業務に起因して発生したケガや病気は、労働者災害補償保険法によるいわゆる「労災保険」で対応されると思います。労災というと、やはり企業イメージ等の関係もあり、あまりよくない(実際に発生していますのはよくはありませんが)ように思われます。そこで労災事故を隠す、報告しない、いわゆる労災隠しを行うとどうなるでしょうか。結論、労災隠しは犯罪です。

労働災害が発生した場合の手続き

 労働災害により負傷した場合、被災労働者が、療養補償給付、休業補償給付(通勤災害の場合は、名称に”補償”という言葉は使われません)の穂に労災保険給付を請求することになります。ただし、休業4日未満の労働災害については、労災保険ではなく、使用者(会社)が労働者に対して、休業補償を行わなければなりません。労災保険給付の請求賞には、事業主(会社)の証明欄が設けられており、事業主はその証明を行います。

 なお、労働基準監督署長は、使用者に対し、労災保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出または出頭を命ずることができますが、これに対し、使用者が報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、または文書の提出をせず、もしくは虚偽の記載をした文書を提出した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に課せられます。

 事業主は、労働災害などによって労働者が死傷した場合には、労働者死傷病報告書を遅滞なく労働基準監督署長あてに提出しなければなりません。これは労働安全衛生法に規定されています。そのため労災保険法による療養補償給付等の請求を行うことが、労災の報告というわけではなく、この報告書を提出しなければなりません。

 休業4日未満の場合には、1~3月、4~6月、7~9月および10~12月の期間における当該事実について、労働者死傷病報告を各期間における最後の月の翌月末日までに提出します。

労災隠し事案の把握・調査

 労働者死傷病報告を故意に提出しなかったり、虚偽の労働者死傷病報告を提出することは、一般に「労災かくしといわれます。

 厚労省は、このような労災かくしに対する対策として、疑いのある事案の把握及び調査に当たっては、①労働基準監督は、労働者死傷病報告、休業補償給付請求書等関係書類の提出がなされた場合には、当該報告書の内容を点検し、必要に応じ関係書類相互間の突合を行い、災害発生状況等の記載が不自然と思われる事案の把握を行うこと、②被災労働者からの申告、情報の提供がなされた場合には、その情報に基づき、改めて労働者死傷病報告書、休業補償給付請求書等関係書類の提出の有無を確認し、また、その相互間の突合せを行い、事案の内容の把握を行うこと、③監督指導時に、出勤簿、作業日誌等関係書類の記載内容を確認し、その内容が不自然と思われる事案の把握を行うこととし、関係部署間で組織的な連携を図り、的確な処理を行うよう指示しています。

死傷病報告書提出義務違反による責任

 使用者が労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出した場合、使用者は、安全衛生法100条違反として、50万円以下の罰金に処せられます。また法人の代表者その他の従業員がその法人の業務に関して、上記違反行為を行った場合、当該行為者のほか、当該法人も、両罰規定により罰金に処せられます

 使用者が上記の義務違反をした場合に、必ず送検されるわけではありませんが、厚労省は、悪質な事案については、罰則を適用して厳しく処罰を求めるなど、厳正に対処する方針を示しており、その義務違反の程度、その後の対応によっては、送検され、処罰されることとなります。

 なお、労災保険のメリット制が適用されている事業場においては、労災かくしが判明した場合、メリット収支率の再計算を行い、必要に応じて還付金の回収を行うなど、適正な保険料の徴収がなされることになります。

まとめ

 労働災害が発生した場合、「労働者死傷病報告」を提出する義務があります。これを怠ると、50万円以下の罰金刑に科されることがあります。また、労災保険のメリット制の不適用といった不利益が課せられることがあります。適正な報告を行う必要があります。