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 2019年4月からの働き方改革関連法の施行により、フレックスタイム制も見直され、使いやすい制度となりました。フレックスタイム制は、従来から制度としてあったものの、導入している企業割合は、企業規模30~99人の事業場では、2.2%、1000人以上の企業においては、21.7%(平成27年度)と、決して高い者ではありませんでした。従来の制度では、清算期間が1ヶ月以内でしたので、月末近くに時間外労働が発生してしまうと、フレックスを使えず、使いづらい制度でした。

2019年からの改正のポイント

●「清算期間」を最長3ヶ月に延長し、より柔軟な働き方を可能にしました。
1ヶ月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定については、行政官庁への届出が必要です。
●1ヶ月の労働時間が週50時間を超えた場合は、その月において割増賃金を支払う必要があります。

精算期間の上限を3ヶ月に引き上げ

 フレックスタイム制とは、「清算期間」で定められた所定労働時間の枠内で、労働者が始業・就業時刻を自由に選べる制度です。労働者は、「清算期間」における所定労働時間(法定労働時間の枠を超えれば割増賃金が発生)に達するよう、労働時間を調整して働くことができるので、ワークライフバランスの実現や育児、介護、治療などと仕事を両立することができるというものです。

 今回の法改正により、清算期間の上限が最長「1ヶ月」から「3ヶ月」まで引き上げられました。

行政官庁への届出

 フレックスタイム制を導入する手続きにあたって必要となる労使協定について、1ヶ月を超える清算期間を定めた場合は、行政官庁(労働基準監督署)へbの届出が義務づけられています。なお、届出義務違反には罰則が適用されます(労基法120条)

労使協定で定める事項

対象となる労働者の範囲:「全労働者」でもよいですし、特定の部門や人に限定することも可能。
精算期間:フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間のことを指し、法改正前は、1ヶ月以内において定める必要がありました。その長さと起算日を定めることが必要です。
精算期間における総労働時間:フレックスタイム制において、労働契約上労働者が清算期間内において労働すべき時間として定められている時間のことで、いわゆる所定労働時間のことを指します。
この時間は、清算期間を平均し、1週間当たりんも労働時間が40時間(特例措置対象の事業場は44時間)以内になるように定めなければなりません。そのための計算式は後述「完全週給2日制における特例」に図示します。
※特例措置対象の事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業(映画の制作の事業は除きます)、保健衛生業、接客娯楽業のことを指します。
 この結果、清算期間を1ヶ月とした場合の総労働時間は、下表【清算期間における法定労働時間の総枠】のとおりにしなければなりません。
標準となる1日の労働時間:標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際にこれを何時間労働したものとして賃金を計算するのか、明確にしておくためのものであり、時間数をさだめることで足りるものです。
コアタイム:1日のうちで必ず勤務しなければならない時間帯です。必ずしも設けなくてもよく、コアタイムを設けないものを完全フレックスタイム制などと呼びます。
フレキシブルタイム:労働者がその選択により労働することができる時間帯です。⑤同様に必ずしも設けなくてもよいものです。
協定の有効期間:清算期間が1ヶ月を超えるフレックスタイム制を導入する場合、労使協定において、当該協定の有効期間も定める必要があります。

36協定について

 時間外労働が生じる場合には、36協定の締結と届出が必要となります。フレックスタイム制の場合の36協定は、1日の延長時間について協定する必要がなく、1ヶ月及び1年の延長時間を協定します。

割増賃金の支払い

 各月の労働時間が週平均50時間を超えた場合(時間外労働が完全週休2日制の場合で1日あたり2時間に相当します)は、使用者はその各月で割増賃金の支払いが必要となります。

※週平均50時間を超えて以内6月と8月の時間外労土運も割増賃金は、清算期間終了後に支払います。
※7月に入社した従業員の場合など、労働させた期間が清算期間より短い場合(精算期間が1ヶ月を超える場合に限る)は、その労働させた期間で平均し、週平均40時間を超えた場合は、割増賃金を支払う必要があります。

1週間当たりの平均労働時間が50時間を超えた場合とは

 清算期間が1ヶ月を超えるフレックスタイム制においては、期間中の各1ヶ月において、その1ヶ月の中での1週間当たりの平均労働時間が50時間を超えた場合は、当該超えた部分が、時間外労働時間となります。

 清算期間全体における労働時間と(清算期間全体における)法定労働時間の総枠とを比較するのではなく、「各月ごとの労働時間」と、「各月ごとの週平均50時間となる労働時間数」とを比較することになります。

計算方法は、①各1ヶ月の実働時間ー②50時間×(各1ヶ月の暦日数÷7日)

※「各1ヶ月の実労働時間」には、法定休日労働時間は含めません。

 月の暦日数ごとに、1週間の平均労働時間が50時間となる労働時間数は、次のとおりです。

時間外労働時間算定例

 【清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内の場合】

①まず、月ごとに、1週間の平均労働時間が50時間を超えていないか確認します。計算式は前述の、

各1ヶ月の実労働時間ー50時間×(各1ヶ月の歴日数÷7日)

②つぎに、清算期間における労働時間が、法定労働時間の総枠を超えているかを確認します。ただし、上記①で計算された時間を除くことになります。

法定労働時間の総枠の求め方は、

40時間×清算期間の歴日数÷7日

③ 上記①で算出された時間が、各月における時間外労働時間となります。最終月では、さらに、上記②で算出された時間の時間外労働時間として加わることになります。

 清算期間が「1月」、「2月」、「3月」の3ヶ月とする場合の時間外労働の算定は次のようになります。

 1月の時間外労働は8.6時間、2月の時間外労働時間は0時間となっています。次に、3月の時間外労働時間を算定するに当たり、清算期間全体における労働時間が法定労働時間の総枠を超過している時間を確認します。

清算期間における法定労働時間の総枠(d)514.2時間

法定労働時間の総枠を超えた時間(e) 58.6時間(a-d-b)

3月における、週平均50時間を超える時間外労働時間数である3.6時間(c)に、法定労働時間の総枠を超えた時間である58.6時間(e)を足した、62.2時間が、3月の時間外労働時間となります。

 なお、大企業においては、月60時間を超える時間外労働に対し50%以上の割増率で割増賃金を計算します。中小企業においては、令和5年4月1日から。)この例の場合ですと、62.2時間で、2.2時間が60時間を超えていますので、この2.2時間に対しては50%以上の割増率で計算します。

完全週休2日制の特例

 完全週休2日制の事業場では、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも法定労働時間の総枠を超え得るという課題を解決するため、完全週休2日制の下での法定労働時間の計算方法に特例を設け、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を法定労働時間の総枠にすることができます。

 具体的には、労使協定により労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数に8時間を乗じて得た時間とする旨を定めたときは、清算期間を平均し、1週間あたりの労働時間が当該清算期間における日数を7で除して得た数をもって、その時間を除して得た時間を超えない範囲内で労働させることができます。

清算期間の途中に入社、退職、異動等をした場合

 清算期間が1ヶ月を超えるフレックスタイム制において、期間中の入社、退職、異動等により、フレックスタイム制の下で実際に労働した期間が清算期間よりも短い労働者については、フレックスタイム制で労働した期間を平均して1週間あたり40時間を超えて働いた時間に対して、割増賃金を支払う必要があります。時間外労働となるわけではない時間に対して、割増賃金支払義務が発生することになります。

 精算期間のうちの一部期間しか勤務していない場合には、日々の労働時間は長くても、期間中における総実労働時間が、清算期間の全体を前提とした法定労働時間の総枠を超えないことが生じがちですが、週平均40時間を超えているのであれば、割増賃金は支払わせるということです。

過重労働の防止措置

 フレックスタイム制においても、1週間あたり40時間を超えて労働させた時間が、1ヶ月当たり80時間を超えた労働者に対しては、これた時間に関する情報を通知しなければなりません。また、医師による面接指導も、一般労働者と同様に、条件に該当する場合には必要となります。

まとめ

 働き方改革によって、従来より使いやすい制度となったフレックスタイム制ですが、実際に勤怠管理や給与計算では、どのように自社のシステムや運用に組み込んでいくか、導入前に検討か必要です。

 現在の給与計算ソフトなどは、1ヶ月を超えるフレックスタイム制に対応していると思いますが、勤怠管理システムも合わせて対応している必要があります。

 勤怠管理や給与計算システムのご相談や、勤怠管理も含めた給与計算については当事務所までお申し付けください。