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2019年4月から働き方改革関連法の施行により、年次有給休暇の取得についても改正法が施行されています。

年次有給休暇取得促進期間

厚生労働省では、年次有給休暇を取得しやすい環境整備を推進するため、一般的に次年度の年次有給休暇の計画的付与について労使で話し合いを始める前の10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、集中的な広報活動を行うこととしています。

この度、令和元年(2019年)10月の年次有給休暇取得促進期間の案内がありました(令和元年9月18日公表)。

年次有給休暇の取得率について、政府は、令和2年(2020年)までに70%とすることを目標としていますが、平成29年(2017年)の実績は51.1%となっており、目標とは大きな乖離があります。
 
このような中、労働基準法が改正され、2019年4月から、使用者は、法定の年次有給休暇の付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年少なくとも「5日」は、年次有給休暇を確実に取得させることが必要とされました(時季指定義務制度の創設)。

厚生労働省では、時季指定義務制度の創設を契機に、計画的付与制度の一層の導入が図られるよう、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施などを行い、周知広報に努めていくこととしています。

今年の「年次有給休暇取得促進期間」の周知用のリーフレットも公表されていますので、ご確認ください。
<10月は「年次有給休暇取得促進期間」です>(厚生労働省)

5日間の年次有給休暇の取得義務化の対象は?

 年次有給休暇5日間の取得義務化は、正社員のみではありません。労働基準法第39条第3項に定められる比例付与も含まれています。そのため、入社当社は付与日数が10日満たないパートタイマーの社員であっても、勤続年数により付与日数が10日以上となった時から対象となります。

またこの規定には、罰則規定がついています(労基法120条)。そのため、年次有給休暇の取得が年4日の社員が一人でもいれば罰則として30万円が課されることになります。

年次有給休暇の取得義務とは?

 年次有給休暇の取得義務化は、社員側が取得する義務があるわけではなく、会社側が取得させる義務があるということです。労働基準法39条7項では「(使用者は)その時季を定めることにより与えなければならない」とされていますので、社員が年次有給休暇を取得する義務ではなく、会社が付与する義務として規定されています。

 ただし、いくら会社側に取得させる義務があるからといって、むやみに取得させるようなことをすれば問題となります。

 平成30年9月7日公布の症例によれば、「使用者は、(労働基準)法第39条第7項の規定により、労働者に有給休暇を時季を定めることにより、与えるにあたっては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない」としています。

また、第2項において、「使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない」とされています。

 この規定により、会社は、社員に対して、一方的に時季指定義務を履行することはできず、あくまでも本人の意思を尊重しなければなりません。

言い換えれば、会社が年次有給休暇取得を社員に強制するようなことがあれば、社員が有する権利を侵害したとして、「ハラスメント事案」になりかねません。

会社としての規定例

 5日間の取得義務については、社員が自ら取得した年次有給休暇については、強制付与すべき5日間の日数から除外することができます。

 年次有給休暇はそもそも社員の心身のリフレッシュ等の目的のために設けられた制度です。そのため、労使のいずれか一方が、権利を主張し、損得の話となるものではありません。そのためには、運用として、労使がWIN-WINの関係となるような、制度設計ができれば理想的です。

 就業規則等の規定例としては、次のようなものが考えられます。

年次有給休暇のうち5日分については基準日から1年以内に、会社が時季を指定することにより付与することがある。ただし、従業員本人が時季を指定して取得した日数(半日取得の場合、0.5日とする)又は計画的付与によって取得した日数については、5日分より差し引くことができる。
2 会社は、前項の規定より、年次有給休暇の時季を定めるときは、その時季について当該従業員の意見を聴くものとし、会社は、当該意見を尊重するよう努めるものとする。この意見聴取は毎年度○月○日までに従業員が提出する年次有給休暇取得計画届で行うものとし、会社は、当該届出に従い、従業員ごとに年次有給休暇取得計画表を作成する。

 労使双方にとって、どちらにも良いようにするためには、行き当たりばったりではなく、前もって計画的に取得するよう、双方の話し合いの場を設けることが有効です。