• TEL: (0823)25-5015
  • 助成金情報・人事労務に関する情報を社会保険労務士が徹底解説

 残業代の計算では、算定方法についていくつか気を付けておくべきポイントがあります。算定方法が間違っていたために未払残業代となってしまうケースもありますので以下、それぞれ見ていきます。

残業代の端数処理の方法

  実務上、時間外労働等の時間数が割増賃金計算時の金額に端数が生じることがあります。これについて、行政通達では、割増賃金を計算する場合の端数処理として、「次の方法は、常に労働者の不利になるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、(労基)法第24条及び第37条違反としては取り扱わない」として、端数処理を認めています。

 具体的には、

①1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げる

②1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げる

③1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の割増賃金総額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満を切り捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げる

このような処理は、法違反として取り扱われません。見てわかるように、子の算定方法は1か月の合計で端数が生じた場合ですので、1日ごとに端数処理をおこなうものではありません。 

 なお、同通達では、1か月の賃金支払額における端数処理として、①1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと、②1か月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月の賃金支払期に繰り越して支払うことも、労基法24条及び37条違反として取り扱わないこととされています。

遅刻した場合の時間外労働の算定

 遅刻した者の時間外労働の算定については、次のような通達があります。

「法第32条又は法第40条に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外労働について法第36条第1項に基づく協定及び法第37条に基づく割増賃金の支払を要するのは、右の実労働時間を超えて労働させる場合に限るものである。したがって、例えば労働者が遅刻をした場合、その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、1日の実労働時間を通算すれば法第32条又は第40条の労働時間を超えないときは、法第36条第1項に基づく協定及び法第37条に基づく割増賃金の支払は必要ない」

したがって、例えば所定労働時間が8時間と定められている事業場で、1時間の遅刻者に対して2時間の時間外労働を行わせた場合、その日の実労働時間が8時間を超えるため、超えた1時間について、割増賃金の支払が必要となります。

 遅刻ではなく、半日単位の年次有給休暇を取得し、午前中に半日有休を取得し、午後から出勤したような場合においても実労働時間が8時間を超えないときは、同様に割増賃金の支払は不要と考えられます。

時間外労働が翌日の勤務まで連続した場合の算定方法

 時間外労働が引き続き、翌日の所定労働時間に及んだ場合には、その翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、労基法37条の割増賃金を支払う必要があります。

 平日の時間外労働が引き続き、翌日の法定休日に及び、法定休日労働をさせた場合には、一勤務として取り扱いますが、割増賃金の支払方法としては、法定休日にかかる割増賃金率は、あくまでも暦日単位で適用するものであることから、法定休日の午前0時以降は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

また、法定休日労働が引き続き翌日の平日に及んだ場合には、このような考え方からすると、平日の午前0時以降については、法定休日労働の35%以上の率で計算した割増賃金を支払う必要はないとされています。

 なお、フレックスタイム制を採用する場合は別として、1日当たり8時間を超えて労働させた後に、翌日又は数日以内の所定労働時間を短縮したとしても法第37条の割増賃金の支払は必要となります。

複数の事業場で労働した場合の算定方法

 労基法38条では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」としています。

事業場を異にすることは、労働者が1日のうち、甲事業場で労働した後に、乙事業場で労働することなどをいいますが、この場合、同一の事業主に属する異なった事業場において労働する場合のみでなく、事業主を異にする事業場、つまり、別会社で働く場合も含まれます。

ここでいう「労働時間に関する規定」とは、労基法32条又は40条はもちろんのこと、時間外労働に関する同法33条および36条、年少者についての同法60条等の規定を適用するにあたっては、甲事業場および乙事業場における労働時間を通算し、上記各条の制限を適用するということになります。

したがって、A株式会社のもとで8時間の労働をしたものをB株式会社で使用することは、労基法33条または36条の規定に基づき、それぞれ時間外労働についての法定手続き(36協定の締結・届け出等)をとれば、当該労働者を使用することは可能となります。

例えば、午前中は甲事業場で、午後は乙事業場で労働するような場合には、これらにおける労働時間が通算され、1つの事業場における労働時間が法定労働時間内であったとしても、2事業場の労働時間を通算して、法定労働時間を超えて労働させた事業主は、当然、この超過時間について割増賃金を支払わなければなりません。

 事業主を異にする場合、時間外労働について法定所定の手続きを行い、割増賃金を負担しなければならないのは、甲乙いずれの事業主であるかについては争いがありますが、通常は、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主となります。

後から労働契約を締結した事業主は、契約に締結に当たって、その労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で労働契約を締結すべきからです。

ただし、甲事業場で4時間、乙事業場で4時間働いている労働者の場合、甲事業場の使用者が、労働者がこの後、乙事業場で4時間働くことを知りながら、労働時間を延長するときは、甲事業場の使用者が時間外労働についての法所定の手続きを要するものと考えられます。

すなわち、「その労働者を一定時間以上使用することにより、時間外労働をさせることとなった使用者が違反者となる。必ずしも1日のうちの後の時刻の使用者でもないし、またあとから雇い入れた使用者でもない」とされています。

 現在、政府では副業・兼業を推進していく立場から、この労働時間の通算については、労働政策審議会等で議論が交わさせています。

変形労働時間制における残業代の算定方法

 労基法32条における変形労働時間制を採用している場合には、その定めに基づいて特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させても、時間外労働とはなりません。

1か月単位の変形労働時間制

 1か月単位の変形労働時間制を採用した場合には、次の時間が時間外労働となります。

①1日については、事業場の労使協定等により8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

②1週間については、事業場の労使協定等により40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間

③変形期間については、その期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間

フレックスタイム制

 フレックスタイム制における時間外労働は、清算期間を単位として考え、清算期間における実働時間が法定労働時間の総枠の範囲を超えた場合、時間外労働となります。

 このため労基法36条による事業場の労使協定も、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働することができる時間を協定すれば足ります。

 なお、実労働時間が、清算期間における総労働時間として定められた時間にくらべ不足があった場合に、当期間内の賃金の減額をすることなく、次の清算期間中の労働時間に上積みして労働させれることは、翌期間の実労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内である限り可能とされていますが、当期間内の実労働時間が総枠を超過した場合に、超過部分を支払わず、翌月労働時間を減らす方法により清算することは違法とされています。

1年単位の変形労働時間制

 1年単位の変形労働時間制を採用した場合には、次の時間が時間外労働となります。

①1日については、事業場の労使協定により8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働させた日

②1週間については、事業場の労使協定により40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間

③対象期間については、その期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間

1週間単位の変形労働時間制

 1週間単位の変形労働時間制( 小売業等接客を伴う30人未満の限定された事業場についてのみ認められている変形労働時間制 )を採用した場合は、次の時間が時間外労働となります。

①事前通知により8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

②1週間については、40時間(特例措置対象事業場にあっては44時間)を超えた時間