• TEL: (0823)25-5015
  • 助成金情報・人事労務に関する情報を社会保険労務士が徹底解説

 平成22年4月から、大企業においては、1ヶ月60時間を超える法定の時間外労働についての割増賃金の率が5割に引き上げられました。中小企業においては現在は適用猶予措置がとられていますが、令和5年度から適用猶予措置が廃止されます。

月60時間を超える労働時間に対する賃金割増率

月60時間を超える時間外労働

 労働基準法上の時間外労働となる時間数が1ヶ月60時間を超える部分について適用されます。この時間外労働の時間数には、休日労働の時間数は算入されません。

会社所定の休日の中の、労基法上の休日労働に該当しない部分の労働であって、その時間が労基法上の時間外労働に該当する部分はこの計算に算入されます

 各会社で定める就業規則において、従業員の休日として、土曜・日曜、国民も祝日や、会社独自の創立記念日など、この労基法の定めるいわゆる法定休日(1週1日または4週4日の休日)以外にも多くの休日が定められていると思います。

これらすべてを総称して会社所定休日などといいますが、この従業員の労働義務のない日として定められている会社所定休日の中には法定休日と法定休日でない休日、つまり法定外休日があります。

月60時間を超える労働時間に対する賃金割増率

休日労働の割増率は?

 1ヶ月60時間を超える法定の時間外労働についての割増賃金の率である5割が適用されるのは、法定休日を除いた残りの会社所定休日における労働時間が、労基法上の時間外労働に該当し、かつ、その時間数が他の時間外労働時間数と合計して1ヶ月60時間を超える部分です。

1ヶ月についてはその起算日を就業規則で定めることが求められます。定めがない場合には、賃金計算期間の初日が起算日として取り扱われます。

 たとえば、1ヶ月の第3週に土曜と日曜と祝日が就業規則上の休日として定められていたとすると、変形休日制をとっていないところでは原則としてそのうちの1日は法定休日と評価され、この日の労働については3割5分の休日労働割増賃金率が適用され、5割の割増賃金率が適用される時間外労働の時間数には算入されません

残り2日については、どちらでもその日に労働した場合には、その時間が1日8時間、1週40時間等の法定労働時間を超えるとそれが労基法上の時間外労働とされ、その時間数が、それまでに行われている労基法上の5割の割増率が適用されることになります。

 土曜日と日曜日と祝日という会社所定休日のどれも、労基法上の休日となり得る休日であり、特にどれかを法定休日と特定していなければ、結果としてどれか1日が休日として確保されれば、その日が労基法上の休日とされ、法定の休日は付与されたことになり労基法上の休日労働はなかったことになります。

他の会社所定休日に勤務した時間は、労基法の労働時間規制の対象となり、前述の条件に合致すれば5割の割増率の適法があります。

この例では3日すべて労働された場合に法定休日を事前に特定していないときは、その週の3日の会社所定休日を過ぎてみないと、労基法上の休日労働があったといえるかどうかが分からないことにもなり、割増賃金の計算等の管理も複雑になります。このため、法定休日とその他の休日(所定休日)の区別を明確にしておくことが望ましいとされています。

法定休日を特定する例としては、一般には、日曜日とする例が多く、土曜日、とする例も見られます。

 なお、このような1ヶ月60時間を超える時間外労働に算入される会社所定休日の勤務が深夜に行われれば、その割増率は、5割プラス2割5分の7割5分となります。

60時間を超えないための対策

割増賃金率が50%(深夜であれば75%)となると、人件費の負担はかなりものとなります。これが中小企業にも適用される令和5年度までに対策を行う必要があります。

従来は、残業などによってある程度の収入を確保する向きもありましたが、収入を得たいという労働者側と、時間外労働に対する規制や、割増率の向上など、会社側からすれば、減らしたい、減らさざるを得ない状況にあります。

そのため、対策の一つには、現場の時間当たりの労働生産性を向上させ、従来よりも少ない時間で成果を出すことが求められます。

併せて、労働生産性が高まった部分の利益で、賃金へ反映させるよう、賃金制度の見直しを図る必要があります。

人手不足の時代から、求人募集をおこなってもなかなか、応募がないような企業もあると思われます。様々な要因(地域の状況、募集時期、募集内容など)が影響していると思いますが、やはり賃金等を含めた労働条件も大きく影響する要因の一つです。

勤怠管理面での対応としては、日々の労働時間の状況は、日々把握できるシステムにすることが重要です。

紙ベースの打刻式タイムカードだと、月の時間外労働の集計が難しく、結果として60時間を超えていたというようなことになりかねません。

クラウド型勤怠管理システム等を用いることで、その日ごと、従業員ごとの労働時間を一目で把握することができ、また60時間に近づきそうな社員がいた場合、時間外労働が50時間に達した時点で、アラームを出す、対象社員にメールを自動配信し、注意を促すといったことが可能となります。

まだ猶予があるように思われますが、残業等の抑制などは、会社の風土から変える必要も出てくるケースがあり、決して一朝一夕でできるものではありません。

対策は、お早めにされることをおすすめします。