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 通勤手当は、多くの会社で支給されています。通勤手当は、通勤時の公共交通機関の利用に伴う交通費に実費やマイカー使用時のガソリン代の補てん等を目的として、支給されるものです。

基本的に実費を補填する目的で、所得税等も非課税の枠があり、労働の成果などに応じて支給される類いのものではありません。

会社によっては、正社員と、パートタイム・有期契約社員とで、支給方法に違いが設けられているようなケースも見られます。また、上限額を設定している企業では、正社員とパートタイム・有期契約社員とで、上限額に差を設けているようなケースもあります。

改正前労働契約法20条解釈通達では

 有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであること。とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り、合理的とは認められないと解されるものであること。

このように、通勤手当を含め、その相違については、正社員と、パートタイム・有期契約社員の間に職務の内容および配置の変更の範囲が異なる場合においても、その違いは、通勤に要する費用の多寡には直接関係があるものではないため、不合理と評価されることになります。

つまり、現在でも、原則として正社員と同世の方法での支給が求められているといえます。

判断基準-ガイドラインでの例示

 厚生労働省のガイドラインでは次のように示されています。

 短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当および出張旅費を支給しなければならない。

 通勤手当や出張旅費の支給の目的がそもそも、職務の内容や配置の変更の範囲に対して支給されるものではなく、実費を補填する目的で支給されるものであるため、雇用形態にかかわらず、同一の支給が求められます。

 ガイドラインでは相違があったとしても問題がない例をとして次のに例示しています。

 A社においては、本社の採用である労働者に対しては、交通費実費の全額に相当する通勤手当を支給しているが、それぞれの店舗の採用である労働者に対しては、当該店舗の近隣から通うことができる交通費に相当する額に通勤手当の上限を設定して当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給しているところ、店舗採用の短時間労働者であるXが、その後、本人の都合で通勤手当の上限の額では通うことができないところへ転居してなお、通い続けている場合には、当該上限の額の範囲内で通勤手当を支給している。

さらにもう一例として、

 A社においては、通勤手当について、所定労働日数が多い(例えば週4日以上)通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者には、月額の定期券の金額に相当する額を支給しているが、所定労働日数が少ない(例えば、週3日以下)又は出勤日数が変動する短時間・有期雇用労働者には、日額の交通費に相当する額を支給している。

 このように、出勤日数に応じて差を設けることは、公共交通機関の運賃やガソリン代の補填的な考え方からすると、合理性があり、差を設けることは不合理となりません。

ハマキョウレックス事件では

 正社員と契約社員との間の待遇格差が争点となったハマキョウレックス事件(最高裁平30.6.1判決)では、契約社員には月3,000円、正社員には月5,000円という通勤手当の相違について、通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものであり、労働契約の期間の有無により通勤に要する費用が異なるものではなく、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではないこと等を理由に改正前の労働契約法20条に定める不合理なものであると判断されました。

まとめ

 本来、通勤手当は通勤に要する交通費の実費保険を目的としているため、出勤日数に応じた形で通勤手当に差を設けて支給することは不合理ではないと解釈されます。

したがって、所定労働日数が少ない、パートタイム・有期契約社員に対して、1ヶ月の通勤定期代と出勤日数分の実費分を比較して安い方を支給するなどの運用においては、不合理な待遇格差とは判断されないと考えられます。